診療科大腸肛門外科
更新日:
きれいで安全な手術が第一
2023年4月より赴任しました。個々の患者さんに合わせて、きれいで安全な手術を行うことを第一に心がけています。
大腸肛門外科部長
今里 光伸
対応疾患
大腸肛門外科では、3人の専門スタッフが主に大腸がん(結腸がん・直腸がん)を中心に診療を行っています。スタッフ全員が日本内視鏡外科学会技術認定医(大腸)およびロボット支援手術認定医(da Vinciサージカルシステム)を取得し、このうち2名はロボット支援手術プロクター(手術指導医)であり、安全な体制を整えています。また他科と連携して、術前診断から内視鏡治療、手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線化学療法など、病状を総合的に判断して患者さんに適した治療を提供しています。
結腸がん | 外科手術(ロボット支援下手術・腹腔鏡下手術) |
直腸がん | 外科手術(ロボット支援下手術・腹腔鏡下手術・経肛門的鏡視下手術) |
大腸がん以外の悪性疾患 | 外科手術(ロボット支援下手術・腹腔鏡下手術・経肛門的鏡視下手術) |
主な手術・検査・設備等
結腸がんの手術
2012年頃から開腹手術に比べてより低侵襲な手術である腹腔鏡手術を可能な限り行っています。創が小さく、傷の痛みも軽度で、術後の回復が開腹手術よりも早く、早期の社会復帰が可能となります。
さらに当科では結腸がんに対しても、2022年よりロボット支援手術を第1選択としています。がんにより通過障害を認める腸閉塞を伴った進行大腸がんに対しては消化器内科と連携して大腸ステントや経肛門チューブ留置を行い、その後に腹腔鏡手術やロボット支援手術を行っています。

早期直腸がんの経肛門的内視鏡下手術(TAMIS)
大腸内視鏡での切除が困難な肛門に近い比較的早期の直腸がんに対しては、肛門に専用機器を装着して直腸内を炭酸ガスで膨らませ、鏡視下で腫瘍を切除する方法(経肛門的内視鏡下手術:TAMIS)を行っています。
肛門からの直腸内操作のため、腹部に傷がつかず、これまで永久人工肛門を造設せざるを得なかった早期直腸がんの患者さんでも肛門温存が可能となります。
直腸がんの手術
直腸がんに対しても従来の腹腔鏡下手術に加え、2018年からロボット支援直腸切除術を行なっており、現在はロボット支援手術を第一選択としています。これにより通常の腹腔鏡下手術では困難な症例(高度肥満・巨大病変など)に対しても、より根治性の高い手術が可能となりました。
また病変に応じて術前放射線化学療法や術前化学療法を行い、根治性に加えて、肛門温存や排便、排尿・性機能温存などに配慮した質の高い治療を提供しています。

「ダビンチ(da Vinci)」という器械を使用して行われ、当院にも導入しています。「ダビンチ」を用いた直腸がん手術が2018年4月に、さらに結腸がん手術が2022年4月より健康保険の適応対象となり、現在当院ではすべての大腸がん症例に対してロボット支援手術を第一選択としています。医療費は通常の腹腔鏡下手術と同じです。
従来の腹腔鏡手術では骨盤内等の深い部位の操作に制限がありました。「ダビンチ」は鮮明な術野、手ブレ防止機能や手首以上の可動域を持つ鉗子によって、深くて狭い骨盤内での操作がより繊細に行うことができます。このため、高い根治性と傷が小さい、出血が少ない、術後合併症のリスクが低いなど様々なメリットが期待できます。
当院では2022年より「da Vinci Xi」2台体制で手術を行っています。

経肛門的直腸間膜切除術(TaTME)併用のロボット支援手術
直腸がんや神経内分泌腫瘍など非常に肛門に近い病変の場合、ロボット支援手術でも切除が困難で永久人工肛門を造設せざるを得ない症例があります。
当科ではこのような困難な症例に対して、経肛門的直腸間膜切除術(TaTME)を併用したロボット支援手術も行っています。TAMISと同様の専用機器を装着して、経肛門的鏡視下手術を行うと同時に腹腔側からロボット支援手術を行うことで、根治性に加えて、肛門温存に配慮した質の高い治療を提供しています。
腹腔鏡下手術
お腹に小さな傷を数か所つけて、細長い手術器械を挿入して行う傷の少ない手術です。
肛門温存
肛門近くに発生した進行直腸癌に対して、ロボット手術・術前化学療法・術前化学放射線療法などを併用し、可能な限り永久人工肛門を回避する方針で治療を行っています。
化学療法
近年、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤をはじめとするがん薬物療法の進歩やがんゲノム医療の発展により、がん治療全体において薬物療法が担う役割は増えてきています。
特色・強み
腹腔鏡下手術に加え、手術支援ロボット「ダビンチ(Xi)」を用いたロボット支援下手術を数多く行っています。
当院は「ダビンチ(Xi)」2台あるため、ほとんどの大腸がん症例でロボット支援下手術を行うことが可能です。
また肛門に非常に近い早期下部直腸がんに対し、病変に応じて経肛門的鏡視下手術(お腹をきらない)を行っています。
高齢がん患者への取り組み
当院では高齢化社会に対応すべく周術期に様々な取り組みをしています。そのひとつとして高齢者総合的機能評価(CGA: Comprehensive geriatric assessment)があります。専門医師が患者さんの身体の状態を把握するだけでなく、精神的・心理的な状態や社会的・経済的な側面まで総合的に評価して、手術前から様々な介入を行います。この取り組みは単に手術を受けることだけを目標とするのではなく、手術後の生活を見据えたものであり、術後により快適な人生を送っていただくための取り組みになります。
大腸がん手術件数
2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
結腸がん | 開腹 | 15 | 16 | 14 | 36 | 28 | 18 |
腹腔鏡 | 84 | 84 | 97 | 87 | 94 | 77 | |
直腸がん | 開腹 | 6 | 4 | 4 | 7 | 7 | 7 |
腹腔鏡 | 36 | 54 | 25 | 21 | 19 | 17 | |
ロボット | - | - | 10 | 29 | 33 | 34 | |
大腸がん | 合計 | 141 | 158 | 150 | 180 | 181 | 153 |
治療実績・成績
● 大腸がんの 治療成績
● 鼠径ヘルニア
年間100-120例の鼠径ヘルニア手術を行っています。高齢者に多い疾患でありますが、全身麻酔下手術に耐えうる患者さんには、腹腔鏡下修復術(TAPP)を提案させて頂きます。また、腰椎麻酔下でのクーゲル法やメッシュプラグ法などの従来の術式に加え、重篤な合併症があり手術を受けることが困難な患者さんに対しても、局所麻酔下での修復術(Lichtenstein法)を行っています。どのような患者さんにも可能な限り治療を検討致します。
● 腹壁瘢痕ヘルニア
腹部手術の合併症の一つである腹壁瘢痕ヘルニアは、日常生活に支障をきたし、整容性の点からも手術をお勧めしております。近年、腹腔鏡下修復術(IPOM)の有用性が報告され、当科においても積極的に行っています。年間20例前後の手術を行っており、半数以上の症例で腹腔鏡下修復術を実施しています。
● 肛門疾患
当科では痔核、痔瘻、直腸脱などの肛門疾患に対して、年間40例前後の手術を行っています。直腸脱に対する従来の手術術式は、再発率が高いことが大きな問題でありますが、低侵襲かつ根治性が高いとされる腹腔鏡下直腸固定術も当科では実施しています。
研究発表
開催日 | 学会等 | 演題 | 演者 |
---|---|---|---|
2019/2/8 | 南河内消化器外科治療セミナー | ストレス“ゼロ”を目指した大腸癌化学療法 | 中田 健 |
2019/2/23 | 第36回日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会総会 | 局所進行直腸癌に対する集学的治療を前提とした右側横行結腸でのストーマ造設 | 中田 健 |
2019/2/23 | 第36回日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会総会 | 低侵襲にこだわったストーマ合併症手術 | 中田 健 |
2019/4/18 | 第119回日本外科学会定期学術集会 | 90歳以上の超高齢者における大腸癌手術成績 | 大原信福 |
2019/5/17 | CRC Expert Meeting in South Osaka | 外科的化学療法のススメ~メスとアービタックス~ | 中田 健 |
2019/5/21 | Colorectal Cancer Seminar in SAKAI | レゴのトリセツ・後方治療の組み立て方 | 中田 健 |
2019/5/24 | 第17回日本ヘルニア学会学術集会 | 遅発性メッシュ感染腸管皮膚瘻切除術の腹壁再建においてComponents Separation法が有用であった1例 | 加藤一哉 |
2019/5/24 | 第17回日本ヘルニア学会学術集会 | 回腸導管傍ストーマヘルニアを腹腔鏡下Keyhole法にて修復した1例 | 長谷川 誠 |
2019/5/24 | 第17回日本ヘルニア学会学術集会 | IPOM術後の糞便性イレウスに対して開腹手術を施行した1例 | 日村帆志 |
2019/5/24 | 第17回日本ヘルニア学会学術集会 | 鼠径ヘルニアのヘルニア門を利用して腹腔鏡下人工肛門造設術を施行した1例 | 大原信福 |
2019/6/1 | 第61回関西STOMA研究会 | 一時的ループストーマ閉鎖術における単純縫合閉鎖の試み | 加藤一哉 |
2019/6/1 | 第61回関西STOMA研究会 | ストーマ管理困難に対し3度のストーマ形成術を施行した一例 | 大原信福 |
2019/7/17 | 第74回日本消化器外科学会 | 腹壁瘢痕ヘルニアに対するMUAR法(Mesh repair under anterior lamina of rectus sheath)の手技と成績 | 三宅祐一朗 |
2019/9/12 | Leader’s Meeting in Kansai & Tokyo | 症例提示 | 中田 健 |
2019/9/13 | 第5回泉州大腸手術研究会 | 当院における腹腔鏡下S状結腸切除術の手術手技 | 大原信福 |
2019/9/21 | LAC Evolution Meeting | 腹腔鏡下S状結腸切除術 | 大原信福 |
2019/9/28 | 第202回近畿外科学会 | "腎癌の横行結腸転移に対して 腹腔鏡下横行結腸部分切除術を施行した1例" | 長谷川 誠 |
2019/11/7 | 南大阪大腸癌懇話会 | サルコペニア患者に対する術前介入の取り組み | 大原信福 |
2019/11/14 | 第81回日本臨床外科学会総会 | 小腸浸潤による腸閉塞を初発症状とし小腸原発腫瘍との鑑別に苦慮した壁外発育型下行結腸癌の1例 | 長谷川 誠 |
2019/11/30 | 第14回関西ヘルニア研究会 | 鼠径ヘルニアに対するONSTEP法55例の検討 | 中田 健 |
2019/12/5 | 第32回日本内視鏡外科学会総会 | S状結腸憩室炎に伴うS状結腸膀胱瘻に対する腹腔鏡下手術の安全性・有用性の検討 | 加藤一哉 |
2019/12/5 | 第32回日本内視鏡外科学会総会 | 腹壁瘢痕ヘルニアと両側鼠径ヘルニアに対し腹腔鏡下で一期的に修復し得た一例 | 長谷川 誠 |
2019/12/5 | 第32回日本内視鏡外科学会総会 | 90歳以上の超高齢者における腹腔鏡下大腸癌手術の治療成績 | 大原信福 |
2020/2/8 | 第37回日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会総会 | ロボット支援下後腹膜経路ストーマ造設術の経験』/口演17-2(2020年2月8日、静岡) | 中田 健 |
2020/7/15 | リリーCRC Interactive Seminar | 進行大腸癌セカンドラインの選択肢 | 中田 健 |
2020/9/12 | 第203回近畿外科学会アフタヌーンセミナ- | 大腸癌化学療法-後半戦の組み立て方 | 中田 健 |
2020/9/26 | 第33回近畿内視鏡外科研究会 | アームの干渉を起こさない下腸間膜動脈周囲の郭清手技-ポート配置と展開の工夫‐ | 中田 健 |
2020/9/26 | 第33回近畿内視鏡外科研究会 | 直腸癌膀胱浸潤に対してロボット支援下骨盤内臓全摘を行った1例 | 泉谷祐甫 |
2020/9/26 | 第33回近畿内視鏡外科研究会 | 直腸悪性黒色腫に対し腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した1例 | 晃野秀梧 |
2020/9/26 | 第33回近畿内視鏡外科研究会 | 腹腔鏡下右側結腸癌手術における体腔内Delta吻合の検討 | 三宅祐一朗 |
2020/9/28 | タケダ南大阪キャンサーチームカンファレンスWEB | Unfit進行大腸癌患者に対する集学的治療戦略 | 中田 健 |
2020/10/6 | バイエルスチバーガCRC WEB カンファレンス | 最大限の治療効果を引き出すためのスチバーガ投与の工夫 | 中田 健 |
2020/10/9 | 第74回手術手技研究会 | ロボット支援下直腸癌手術における脾彎曲部授動の工夫 | 中田 健 |
2020/10/24 | 第58回日本癌治療学会学術集会 | ロボット支援下直腸癌手術における中枢側リンパ節郭清手技の検討 | 中田 健 |
2020/10/24 | 第58回日本癌治療学会学術集会 | 直腸癌膀胱浸潤に対してロボット支援下骨盤内臓全摘を行った1例 | 泉谷祐甫 |
2020/10/24 | 第58回日本癌治療学会学術集会 | 直腸悪性黒色腫に対し腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した1例 | 晃野秀梧 |
2020/10/29 | 第82回日本臨床外科学会総会 | 当院における鼠径ヘルニアに対するONSTEP法の検討 | 三宅祐一朗 |
2020/11/18 | CRCC大阪南部 | 当院におけるザルトラップの使用経験 | 中田 健 |
2020/12/5 | 第6回がん地域連携クリニカルパス研修会 | WEBで繋がるこれからの病診連携 | 中田 健 |
2020/12/11 | 第26回Osaka Cancer Care Forum | がん治療の先を見据えた緩和ケア | 中田 健 |
2020/12/17 | 第75回日本消化器外科学会総会 | Componets separarion法による腹壁再建の有用性と安全性の検討 | 加藤一哉 |
原著、総説、著書
年 | 題名 | 著者 | 著書・誌名 |
---|---|---|---|
2019 | 巨大な腹壁欠損を局所陰圧閉鎖療法にシューレース法(Shoelace、靴ひも縫合)を併用して閉鎖し得た1例 | 鄧傑之、中田健、臼井章浩、森本伸一、南部真里恵、山本絵美子、辻江正樹 | STOMA |
2020 | 一時的ループストーマ閉鎖術における腸管切除吻合法と単純縫合閉鎖法の比較検討 | 加藤一哉、中田健、大原信福、森本伸一郎、南部真里恵、山本絵美子 | STOMA |
2020 | Phase II Study of Panitumumab Monotherapy in ChemotherapyNaive Frail or Elderly Patients with Unresectable RAS Wild-Type Colorectal Cancer: OGSG 1602 | Terazawa T, Kato T, Goto M, Ohta K, Noura S, Satake H, Kagawa Y, Kawakami H, Hasegawa H, Yanagihara K, Shingai T, Nakata K, Kotaka M, Hiraki M, Konishi K, Nakae S, Sakai D, Kurokawa Y, Shimokawa T, Satoh T The Oncologist | The Oncologist |
2020 | 緩和ストーマ造設における合併症とストーマ管理 | 中田健、森本伸一郎、南部真里恵 | WOC Nursing 2020/9 Vol.8 No.9 |
2021 | 消化器領域の遺伝性腫瘍(家族性大腸腺腫症、リンチ症候群)の基礎知識 | 冨田尚裕、能浦真吾 | 消化器看護 |
2021 | リンパ節転移を伴った9mmの直腸神経内分泌腫瘍G1の1例 | 藤川 馨、能浦真吾 | 日本外科系連合学会誌 |
2021 | 単孔式腹腔鏡下結腸部分切除・体腔内吻合術で切除し得た下行結腸癌術後吻合部再発の1例 | 鈴木 陽三、能浦真吾 | 癌と化学療法 |
2021 | 大腸癌卵巣転移切除術の予後についての検討 | 吉原 輝一、能浦真吾 | 日本消化器外科学会雑誌 |
2021 | The Validity of a New Edition of Classification for Ovarian Metastasis from Colorectal Cancer | Yoshihara T, Noura S | J Anus Rectum Colon |
2021 | Tolerability and safety of adjuvant chemoradiotherapy with S-1 after limited surgery for T1 or T2 lower rectal cancer | Tei M, Noura S | Int J Clin Oncol |
2021 | Impact of aspirin discontinuation on thrombotic complications in laparoscopic colorectal cancer surgery | Harino T, Noura S | Surg Endosc |
2021 | Simple surgical method for clamping the rectum in robot-assisted laparoscopic rectal surgery for rectal cancer, a simple clamping technique: A video vignette | Takeyama H, Noura S | Colorectal Dis |
地域の医療関係者の方へ
大腸がんなど下部消化管の悪性腫瘍に対して、結腸・直腸を問わずロボット支援下手術を第一選択としています。当院は「ダビンチ(Xi)」が2台あるため、他院と比べて待機期間が短くロボット支援下手術を行うことが可能です。
地域の患者さんへ
大腸がんに対して、結腸・直腸を問わずロボット支援下手術を第一選択としています。当院は「ダビンチ(Xi)」が2台あるため、他院と比べて待ち時間が短くロボット支援下手術を行うことが可能です。