- 診療放射線技師 8名(うち放射線治療専門放射線技師 2名)
- 放射線治療品質管理士 1名
- 医学物理士 2名(非常勤)
- 放射線治療科専従看護師 1名
- 日本放射線技師会認定放射線管理士 1名
- 日本放射線技師会認定放射線機器管理士 1名
診療科 - 放射線治療科 -
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放射線治療はがん治療の三本柱のひとつで,文字通り放射線を腫瘍に当てて治療する、「切らずに治す治療」です。がん治療では、外科手術、化学療法(抗がん剤治療)と並んで有力な治療法ですが、近年の放射線治療は機器の進歩で副作用が著しく軽減され、治療中・後の患者さんの生活の質(QOL: quality of life)を良好に保ちながらの治療が可能です。そして当科では放射線治療の実施とともに患者さんへのアメティーをも重視し、広くゆったりした待合室を設けています。また医療者や一般の方々にもよりよくご理解頂くため、当科を見学して頂くためのツアーを随時開催しています。
放射線治療外照射の技術は近年非常に発達を遂げ、標的である腫瘍に対し、より高精度に、より効率よく線量を投与することができ、一方で副作用をより軽減できることも可能となっています。当院でも最新のX線装置を導入して良好な効果を挙げており、『待たせない、あきらめない』をモットーに,診療を行っております。
また放射線内用療法(放射性物質を体内に取り込み,内部から照射する治療法)として、去勢抵抗性前立腺癌骨転移(内分泌療法が効かなくなった前立腺癌の骨転移例)(mCRPC)に対してゾーフィゴ注(Ra-223)、および早期甲状腺癌術後のアブレーション治療として外来でのI-131内服療法も当院で実施しています。後者は堺市内で唯一の治療実施施設です。
放射線治療は、手術のように痛みを伴わず、また全身治療である抗がん剤治療と比べても治療中の患者さんの生活の質(QOL: quality of life)を良好に保ちながらの治療が可能です。近年の技術の進歩により、腫瘍により高精度に、より効率よく線量を投与できる一方で、副作用を一段と軽減できるようになっています。
放射線治療科では以下の疾患・病態に対して取り組みを強化しています。
肺癌:近年、もっとも著しい進歩を遂げているのが肺癌の治療であり、分子標的薬剤、免疫チェックポイント阻害剤の適用で、IV期とされる遠隔転移症例でも長期生存~治癒が得られるまでになり、かつての「予後不良」なイメージは払拭されています。当院においても呼吸器内科・外科あるいは脳神経外科・整形外科など、また看護師・薬剤師・技師などと連携をとり、患者さんの治療・ケアに当たります。小結節末梢肺癌に対して体幹部定位放射線治療SBRTの適用を推進します。またIII期非小細胞肺癌に対しては根治を目指した治療体系を個々の症例に応じてカンファレンスで討論した最良の治療の適用を目指します。当科のモットーである「待たせない、あきらめない」を最も顕著に発揮できる疾患になっています。
乳癌:手術後の放射線治療の重要性が強調されています。乳房温存術後照射を実施し、殊に局所限局性で化学療法を受けていない患者に対して、当院では42.56Gy/16回/3.5週の短期照射を実施しています。治療成績や晩期有害事象に関して50Gy/25回/5週の標準照射と差を認めないことが確認されています。
大腸癌:外科との協調を図り、術前化学放射線療法のより多くの適用を図ります。また、肝転移・肺転移症例に対しては定位治療(ピンポイント照射)を推進します。
肝腫瘍(原発性・転移性):定位放射線治療やIMRTが可能となりますので、根治に向けた実施を考慮します。
前立腺癌:泌尿器科と協調を図り、IMRT適応患者の,待機期間の短縮、治療期間の短縮に努めています。また去勢抵抗性前立腺癌mCRPCの骨転移例に対してはゾーフィゴ注(Ra-223)の適用が可能です。
造血器腫瘍:当院血液内科と協調し、局所ブースト治療の有効利用やIMRT適用などでの副作用の低減を目指します。病気に対する治療全般として患者の肉体的・財政的負担の軽減を図るよう努めています。
骨転移:すべての悪性腫瘍で骨転移は痛みを伴うだけでなく、病的骨折をも来します。また脊髄・神経圧迫はその後の患者のQOLを著しく損なうので、一刻も早く治療する必要があります。当院では骨転移患者を原則として院内外を問わず事前に登録しておき、整形外科医・IVR医師等と協同で診療に当たる体制を取っております。
脳転移:がん治療の進歩で長期生存者が増えると共に、脳転移の患者も増加しています。また定位放射線治療(SRT)(いわゆるピンポイント照射)は、その適応とされる転移の個数が多くてもSRTの適用で長期生存が期待できるまでになっています。当院ではリニアックによるSRTが可能であり、適切な治療選択に関する検討ののち、適応患者に対してはSRTを適用します。
リニアック(直線加速器)による外照射をあらゆる部位に対して適用しており、新病院への移転に伴い、平成27年(2015年)からは最新の高精度放射線治療の導入で、標的である腫瘍により効率よく線量を投与でき、一方では副作用を格段に軽減できるようになっています。
それとともに治療する患者数も徐々に増加し、新規治療計画数は平成30年(2018年)には485件、平成31・令和元年には468件を計画し、治療しました。
放射線治療の全身的な影響としては、むかつきやだるさ、食欲の低下などが生じます。二日酔いに似た症状なので「宿酔症状」といわれます。但し、個人差は大きく、また抗がん剤で感じる同様の症状に比べると軽度で済みます。「宿酔症状」に個人差が生じるのは、その時の全身状態、照射する部位や範囲・大きさ、また抗がん剤を併用しているか、などによっても異なります。「宿酔症状」の出方には特徴があります。例えば午前中に治療を受けたとすると、「だるさ」はやや後で現れ、昼食はもう一つ進まない、午後は昼寝したくなる、夕食も進まない、という状態が、例えば午後8時頃にはすっきりしてきて俄然食欲がでてくる、といったサイクル(日内変動)(図1)を感じます。また通常は週5日・毎日の治療ですから週初めに比べて後半の方がだるさは強く感じてきます。それが週末になると治療がないので「だるさ」が回復する、これが繰り返されます(週内変動)(図2)。
図1. だるさ・宿酔症状の日内変動
図2. だるさ・宿酔症状の週内変動
画像誘導照射(Image-Guided Radiation Therapy:IGRT)
体内にある標的(腫瘍)は呼吸や腸蠕動によって絶えず動きます。新機器では標的への照射をより精度よく、無駄なく照射するために、毎回の照射位置合わせや、照射中の移動などに、組み合わされたExacTracや、搭載されたコーンビームCTなどを使って絶えず監視・修正することができます。4門(1回の治療の際に照射する方向の数)以上の照射や特殊な照射など、複雑な照射治療を行う場合に威力を発揮します。
強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy:IMRT)
IMRTは、高精度治療の代名詞のようにもいわれていますが、「腫瘍に放射線を集中させ周囲正常組織への線量を減らす」ことを、より効率よく実施するために、専用機能を持った治療計画コンピュータを用いて照射野の形状を変化させたビームを、固定角度から複数門で用いる、あるいは回転させて照射するなどして腫瘍の形により適した放射線治療を行う治療です。例えば前立腺がんの場合など、すぐ後方の直腸への線量を下げるためにはこの方法を用いるので、副作用を増加させずにより多い線量を腫瘍に照射することができます。すべての腫瘍に適用可能で、殊に前立腺がん、頭頸部がん、脳腫瘍などで威力を発揮します。当科の平成30年の実績は計60件(うち、前立腺癌41件、骨盤部5件、頭頚部2件)に適用しています。2名以上の放射線治療担当常勤医師がいることが条件となっています。
定位(および体幹部定位)放射線治療
多くの方向から集中して照射することでその部位の線量を格段に高めて、周囲の正常組織との線量の差を大きくします。「ピンポイント照射」とも呼ばれる照射法で、文字通りミリ単位の標的に狙い撃ち照射する方法をいいます。多くは脳の腫瘍(原発性や転移性)に適用されます。また体幹部定位放射線治療では、小さな末梢性肺がん(原発性、転移性)や肝臓の腫瘍などに適用します。よく知られる「ガンマナイフ」、「サイバーナイフ」などはいずれもこの定位放射線治療のために開発された専用の機器の商品名ですが、当院のリニアックでもこの技術の実施は可能で、平成30年には計47件(うち肺原発・転移に27件、脳転移に17件)を治療しています。2名以上の放射線治療担当常勤医師がいることが条件となっています。
放射線内用療法として、去勢抵抗性前立腺癌骨転移(内分泌療法が効かなくなった、転移例)に対してゾーフィゴ注(Ra-223)、および早期甲状腺癌術後のアブレーション治療として外来でのI-131内服療法も当院で実施しています。後者は堺市内で唯一の治療実施施設です。
リニアック(直線加速器)による対外照射をあらゆる部位に対して適用しており、新病院への移転に伴い、平成27年からは最新の高精度放射線治療装置バリアン社製TrueBeam TMにBrainLab社製ExacTracを組み合わせ、強度変調放射線治療IMRTや定位・体幹部定位放射線治療SRT/SBRT(いわゆるピンポイント照射)などの、ミリ単位での精度を要求される,精緻で低侵襲な治療が可能となり,著明な副作用の軽減を達成できました。それとともに治療する患者数も著明に増加し,今や府下でも有数の治療数となっています。平成30年及び平成31年(令和元年)の年間新規患者数その他の実績を表1、2および3に示します。
表1.治療患者数 平成30年総計485名、平成31・令和元年総計468名
平成30年 | 平成31・令和元年 | 平成30年 | 平成31・令和元年 | ||
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脳・脊髄 | 5 | 10 | 婦人科 | 19 | 17 |
頭頸部 | 15 | 18 | 泌尿器系 | 63 | 67 |
(うち前立腺) | 52 | 50 | |||
食道 | 28 | 18 | 造血リンパ系 | 25 | 29 |
肺・気管・縦隔 | 118 | 128 | 皮膚・骨・軟部 | 2 | 6 |
(うち肺) | 115 | 127 | |||
乳腺 | 129 | 109 | その他悪性腫瘍 | 6 | 1 |
肝臓・胆嚢・膵臓 | 17 | 17 | 良性疾患 | 0 | 0 |
胃・小腸・大腸・肛門 | 57 | 48 | AYA世代・30歳以下 〔14歳以下〕 |
1 (0) |
3 (0) |
表2. 高精度治療実施症例数 平成30年 平成31・令和元年
平成30年 | 平成31・令和元年 | 平成30年 | 平成31・令和元年 | ||
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強度変調放射線治療IMRT | 57 | 79 | 定位・体幹部定位放射線治療SRS/SRT/SBRT | 56 | 54 |
内訳 前立腺 | 44 | 44 | 内訳 脳 | 24 | 34 |
頭頸部 | 3 | 8 | 肺 | 30 | 17 |
肺 | 3 | 5 | 肝 | 2 | 1 |
脳 | 1 | 3 | |||
その他 | 6 | 19 | その他 | 2 | 2 |
表3. 予約外・当日緊急対応者数
平成30年 | 平成31・令和元年 | |
---|---|---|
神経麻痺〔予防も〕 | 12 | 15 |
気道狭窄 | 2 | - |
骨転移〔緊急以外も〕 | 98 | 90 |
疼痛8・その他 | 4 | - |
表4. 放射線治療総患者数と肺・呼吸器領域の割合の推移
2014年 | 2015年 (移転年) |
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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照射患者総数 | 326 | 221 | 337 | 389 | 485 | 468 |
うち肺C33-34 | 61 | 37 | 74 | 81 | 115 | 127 |
肺の割合% | 19% | 17% | 22% | 21% | 24% | 27% |
SRT総人数 | 6 | 17 | 47 | 35 | ||
肺へのSBRT | 4 | 8 | 25 | 16 | ||
脳へのSRS/SRT | 2 | 17 | 32 | |||
IMRT総数 | 0 | 22 | 55 | 57 | 79 | |
肺へのIMRT | 3 | 5 |
図1.放射線治療患者数部位別推移
G階 予約患者のみ
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | ||
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初診/再診 | 午前 | 池田 恢 | 和田 健太郎 | 和田 健太郎 | 池田 恢 | 和田 健太郎 |
午後 | - | 和田 健太郎 | 和田 健太郎 | - | 和田 健太郎 |
日本放射線腫瘍学会認定協力施設となっています。また、診断領域の放射線科と合わせて、日本医学放射線学会の放射線科専門医修練機関となっています。
日本放射線腫瘍学会、他2学会:放射線治療における第三者機関による出力線量評価に関するガイドライン2019.(ガイドライン作成小委員会委員・執筆者として参画)日本放射線腫瘍学会、他2学会. | 池田 恢 |
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腫瘍学と放射線生物学(遺伝子部分を除く) 診療放射線技術下疳 改訂第14版pp.7-22.南江堂 2019. | 池田 恢 |
2019年放射線治療科の実績とその推移~待たせない・諦めない治療を目指して~ 堺市立総合医療センター医学雑誌 第20巻66-68. 2019. | 池田恢,大久保裕史、北野崇夫、中田陵賀、藤井和彦、関和文、廣瀬直美,高橋亮介、吉村浩亮、前田美恵子、岡本涼夏、八木雅史、大谷侑輝、西上亜弥、水谷亜紀、北山睦子、田村幸江 |
病院移転後の放射線治療・2018年の実績と展望~新患待機2週以内を目指して~ 堺市立総合医療センター医学雑誌 第19巻65-68. 2018. | 池田恢、藤田淳也、大久保裕史、北野崇夫、中田陵賀、藤井和彦、関和文、廣瀬直美,高橋亮介、吉村浩亮、前田美恵子、岡本涼夏、八木雅史、大谷侑輝、古谷緑、水谷亜紀、北山睦子、田村幸江 |
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第21回関西チーム医療研究会 当番世話人 2017年9月16日 大阪天満研修センター | 池田 恢 |
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巻頭言 出力測定事業、10年が経過して 線量校正センターニュース 第7巻 P. 1. 医用原子力技術研究振興財団 2017. | 池田 恢 |
日本放射線腫瘍学会編「外部放射線治療におけるQAシステムガイドライン2016年版」で、総論1.4「施設QAとQAレベルの均質化」(pp. 6-8)、1.6「診療規模別放射線治療実施体制について」(pp. 14-17)、1.8「第三者監査」(p. 19)、臨床QA 3.1「放射線治療の流れ」(pp. 95-97)を担当 金原出版 2016. | 池田 恢 |
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