Sakai Medical Stories Vol.8 生命のデータを守る:精度管理の最前線と急性期医療を支える臨床検査技師の使命

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Vol.8 生命のデータを守る:精度管理の最前線と急性期医療を支える臨床検査技師の使命
臨床検査技術科 副技師長 石橋 麻里子
「数値の向こう側に、一人の人生がある」―。
そんな深い敬意を胸に、顕微鏡や分析装置から得られる膨大なデータと真摯に向き合っているのが、臨床検査技師の石橋 麻里子さんです 。
急性期医療の最前線において、医師が下す診断の「根拠」を支える精度管理の重要性とは。
国際規格であるISO 15189の取得から、一分一秒を争う救急現場でのチーム連携、そして趣味の吹奏楽を通じて磨かれるプロフェッショナルとしての在り方まで 。
縁の下の力持ちとして「生命のデータ」を守り続ける、石橋さんの情熱と素顔に迫りました 。
Q1.一分一秒を争う「急性期病院」において、臨床検査技師の役割とは何でしょうか?
当院は三次救急を日常的に受け入れており、一刻を争う患者さんが1日に何度も来院されます。
そのような現場では、迅速かつ正確に検査結果を返せることが必須スキルです。
検査データは医師が診断を下す根拠になるだけでなく、治療方針の決定や副作用のモニタリングなど、あらゆるフェーズで活用される「命の指標」となります。
Q2.国際規格「ISO 15189」を取得したことで、検査室はどう進化しましたか?
ISO 15189は、いつ検査しても正しい結果を出せる仕組みを組織として保証する国際規格です。
2022年3月の取得以降、さまざまな「仕組み」が整備されました。
これによりスタッフの意識が向上し、精度の高い結果を報告し続ける組織文化がより強固なものへと進化しました。
Q3.品質を維持するための「標準作業手順書(SOP)」には、どのようなこだわりがありますか?

認定を受けている全検査項目について、スタッフが手作りで手順書を整備しています。
学会のガイドライン等の根拠を明記し、必ず1年に1回、実際には半年に1回程度は見直しを行います。
私の担当分野だけで約20種類、全体では100を超えますが、この徹底した管理により「いつ誰が行っても同じ手順・同じ結果」が得られる体制を保証しています。
Q4.ヒューマンエラーを防ぐために、組織として取り組んでいることは?
「エラーはゼロにはならない」という前提に立ち、起きにくくするにはどうするか、また起きたときにどうカバーするかの仕組みづくりを重視しています。
ミスが発生した際は当事者を責めるのではなく、検査室全員で原因と対策を考え、「どこで失敗が起きやすいか」を共有する文化があります。
Q5.緊迫した救急・夜間対応において、プロとして大切にされていることは?
特に「パニック値(放置すると生命の危険に直結する異常値)」を速やかに報告することを最優先しています。
夜間や休日は2名体制という少人数で対応するため、自分の得意分野以外も互いに学び合い、どんな状況でも正確なデータを迅速に提供できる安心感を担保するよう努めています。
Q6.AI技術が進む中で、これからの検査技師に求められる専門性とは何でしょうか?

AIは画像解析などで活用され始めていますが、現状では人の目の判断力が勝る場面も多いです。
機械を正常に動かし続け、わずかな異変に気づける専門性こそが不可欠です。
「機械に乗せたら終わり」ではなく、その数値の妥当性を判断できるプロであり続けたいと考えています。
Q7.患者さんと接する機会が少ない中で、やりがいを感じる瞬間は?
白血病患者さんの骨髄検査への立ち会いなどを通じ、不安や回復の様子を間近に感じる時、検査データが治療に直結していることを強く意識します。
また、多職種で連携する栄養サポートチーム(NST)への参加を通じ、検査数値をもとにしたケアで患者さんの状態が改善し、無事に転院や社会復帰をされたエピソードを聞くとやりがいを感じます。
Q8.石橋さんから見て、当院の検査部門の「強み」は何ですか?
「部門間の垣根がないこと」です。
血液、細菌、病理、生理などの各担当が同一フロアにおり、相談や情報共有が非常にスムーズです。
スタッフの平均年齢も約37歳と若く、互いに質問しやすく新たなことにも挑戦しやすい「柔らかいけど芯がある」プロフェッショナル集団であることが自慢です。
Q9.石橋さんの仕事の原動力となっている「信念」を教えてください。
「常に学び、教え合える文化を大切にすること」です。
20年以上のキャリアがあっても知らないことがたくさんあります。
年次に関わらず教えを請える姿勢を持ち、組織全体のクオリティを維持・向上させていくことが、患者さんからの信頼に繋がると信じています。
Beyond the White Coat
― 白衣の向こう側 ―
ここからは、医療や仕事の話から少し離れて、休日の過ごし方や好きなものなど、日常のひとコマから見えてくるスタッフの人となりや、ちょっと意外な一面をご紹介します。

*趣味
30年以上、ユーフォニアムという楽器で吹奏楽を続けています。
学生時代の仲間と共に創設した一般楽団で堺市や和泉市を中心に活動しており、ホールでの演奏会は最高のリフレッシュです。


*おすすめの飲食店
パブラウンジエメラルド(沖縄県北中城村)です。
毎年の沖縄旅行で食べるボリューム満点のリブステーキも、明日への活力になっています。

