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診療科放射線治療科

更新日:

根治照射から症状緩和まで、治療中・後の患者さんのQOL(生活の質)を良好に保ちます。

放射線治療はがん治療の三本柱のひとつで、「切らずに治す治療」です。近年の放射線治療の進歩で高精度治療が可能となり、適応の拡大とともに副作用が著しく軽減され、治療中・後の患者さんの生活の質(QOL: quality of life)を良好に保てるようになっています。たとえ遠隔転移でもオリゴ転移で制御可能であれば、高精度照射により長期生存が望めます。諦めないでください。

放射線治療科部長
池田 直樹

対応疾患

放射線治療の適応は多岐に渡り、悪性腫瘍(がん)であればほとんどが対象になります。がんの種類やステージに応じて、IMRTや定位照射といった高精度治療(詳しくは4.主な手術・検査・設備等を参照ください)を用いることで、副作用を減らしつつ治しきることを目指した根治治療を行います。根治治療が適さない場合でも、一時的に進行を遅らせたり症状を和らげる・予防する緩和治療も積極的に行っています。その他に聴神経鞘腫や髄膜腫といった一部の良性腫瘍・増殖性疾患も対象になります。以下に適応の例を記載しますが、記載がないから出来ない・やっていないという訳ではありませんので、まずはご相談ください。

肺がん 末梢性の肺がんのうち、手術が適さない・手術を希望されない場合には根治的な定位照射を行っています。また、中枢性の限局性肺がんや術後の局所再発に対しても根治的な治療を行っています。Ⅲ期の非小細胞肺がんに対しては、手術と組み合わせた集学治療や抗がん剤を組み合わせた根治的放射線治療をカンファレンスで検討の上行います。
乳がん 乳房温存術後照射として、当院では42.56 Gy/16回(3.5週間)の短期照射を実施しています。領域リンパ節への照射が必要な場合などは50 Gy/25回(5週間)の治療となります。正常臓器の温存のために高精度治療を行うこともあります。
食道がん 初期の食道がんには抗がん剤を併用した根治的な放射線治療を行います。Ⅱ・Ⅲ期の食道がんに対しては、術前に放射線治療を行うことで手術しやすくしたり、手術の適さないものに対して根治的な放射線治療を行います。また、通過障害や出血といった症状の緩和を目指した治療も可能です。
大腸がん 術前化学放射線治療を実施しており、より多くの適応を図ります。転移性の肺腫瘍や肝腫瘍に対しても定位照射で根治を目指します。
肝がん 定位放射線治療を含めた高精度治療が可能です。少数であれば根治を目指した治療の適応になります。疼痛や血管狭窄に対して緩和を目指した治療も可能です。
前立腺がん 高精度治療を用いて根治的な治療を行います。がんの状態に応じてホルモン治療を併用します。治療期間の短縮に努めており、60 Gy/20回(4週間)での治療が可能です。去勢抵抗性前立腺がんの骨転移例に対してはゾーフィゴ(Ra-223)の適応が可能です。
子宮頸がん 外照射は高精度治療で行います。腔内照射は当院では設備がありませんが、他施設と連携・協同することで治療を行っています。また、術後放射線治療も行っています。
悪性リンパ腫・多発性骨髄腫(造血器腫瘍) 抗がん剤後の地固め放射線治療や、局所のみであれば根治的な放射線単独治療も行います。
少数の転移性腫瘍(肝臓、肺、骨など) 高精度治療を用いて長期制御を目指します。特に脳や背骨などは他に転移があったり、多数の転移があったりしても局所制御を目的とした強度の高い治療が可能な場合があります。
緩和照射 根治的な治療が適応にならない場合であっても、症状を緩和するために放射線治療を行うことができます。その際は副作用がほとんど出ないように照射量を減らしたり、患者さんの状況に合わせて回数の調整も可能です(最短1回)。骨や臓器、皮膚の痛みや、腫瘍の圧迫による通過障害や神経症状を和らげたり、症状が出ないように予防する目的でも照射を行っています。

特色・強み

・高精度放射線治療として、画像誘導放射線治療(3D-IGRT)を全例に実施しているほか、体幹部も含めた定位放射線治療(いわゆるピンポイント照射)や、強度変調放射線治療(IMRT/VMAT)を実施しています。詳しくは4.主な手術・検査・設備等を参照ください。
・オリゴ転移(oligometastasis)への対処 近年広まり始めている概念であり、遠隔転移が生じても少数であれば、オリゴ転移とみなされます。一定の条件のもと(その部位を治療する場合に安全に治療できる見通しがあり、原発巣は制御できていることが望ましい)定位照射などで長期制御が可能となり、健康寿命や増悪までの期間を延ばすことができます。脳転移への適用などはその顕著な一例で、遠隔転移でも「諦めない」姿勢に変化してきています。
・「放射線治療ホットライン」「日帰り単回緩和的放射線治療」(詳細は放射線治療科にご確認ください)などの取り組みを始め、地域からの紹介を積極的に受け入れています。ホットラインで直接電話相談にのり、在宅で療養されている患者さんなどにも緩和的放射線治療を適応できます。

主な手術・検査・設備等

リニアックTrueBeam

新病院への移転と共に導入されたリニアックTrueBeamは、最新の機能を有し、X線で実施可能なほぼすべての「高精度治療」の実施を達成できています。                               

画像誘導照射 (Image-Guided Radiation Therapy: IGRT)

新機器では体内の動きに合わせて標的(腫瘍)への照射をより精度よく、無駄なく照射するために、毎回の照射位置合わせや、照射中の移動などに、ExacTracやコーンビームCTなどを使って絶えず監視・修正することができます。ほぼすべての治療に適用していますが、殊に4門(1回の治療の際に照射する方向の数)以上の照射や特殊な照射など、複雑な照射治療を行う場合に威力を発揮します。

強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy: IMRT)

IMRTは、高精度治療の代名詞のようにもいわれていますが、「腫瘍に放射線を集中させ周囲正常組織への線量を減らす」ことを、より効率よく実施するために、専用機能を持った治療計画コンピュータを用いて照射野の形状を変化させたビームを、固定角度から複数門で用いる、あるいは回転させて照射するなどして腫瘍の形により適した放射線治療を行う治療です。例えば前立腺がんの場合など、すぐ後方の直腸への線量を下げるためにはこの方法を用いるので、副作用を増加させずにより多い線量を腫瘍に照射することができます。すべての腫瘍に適用可能で、殊に前立腺がんや骨盤部腫瘍、頭頸部がん、脳腫瘍などで威力を発揮します。

定位(および体幹部定位)放射線治療

多くの方向から集中して照射することでその部位の線量を格段に高めて、周囲の正常組織との線量の差を大きくします。「ピンポイント照射」とも呼ばれる照射法で、文字通りミリ単位の標的に狙い撃ち照射する方法をいいます。多くは脳の腫瘍(原発性や転移性)に適用されます。また体幹部定位放射線治療では、小さな末梢性肺がん(原発性、転移性)や肝臓の腫瘍などに適用します。よく知られる「ガンマナイフ」、「サイバーナイフ」などはいずれもこの定位放射線治療のために開発された専用の機器の商品名ですが、当院のリニアックでもこの技術の実施は可能です。

放射線核医学治療・内用療法

去勢抵抗性前立腺癌骨転移(内分泌療法が効かなくなった、転移例)に対してゾーフィゴ注(Ra-223)、および早期甲状腺癌術後のアブレーション治療として外来でのI-131内服療法も当院で実施しています。後者は堺市内で唯一の治療実施施設です。


実績

疾患名 2018年度 2019年度
2020年度
2021年度
2022年度
5 9 14 8 9
頭頸部 24 16 12 20 24
食道 23 21 26 19 26
肺・気管・縦隔 113 133 116 129 168
乳腺 124 111 119 119 147
肝胆膵 15 18 9 9 31
胃・小腸・大腸・肛門 54 49 41 71 54
子宮・卵巣・外陰 18 21 33 18 20
前立腺 45 55 70 64 71
その他泌尿器 14 14 23 8 10
造血器・リンパ系 28 29 26 32 40
皮膚・骨・軟部 2 5 10 7 11
原発不明 4 2 2 2 0
合計 469 483 501 506 611

緩和照射なども含めた原疾患毎の累計です。

原著、総説、著書

題名 著者 著書・誌名
2019 腫瘍学と放射線生物学(遺伝子部分を除く) 池田 恢 診療放射線技術改訂14版下巻(南江堂)

関連リンク

地域の医療関係者の方へ

当院は、がん診療拠点病院として地域の病院や在宅クリニックからの紹介を積極的に受け入れています。特に緩和照射に関しては、「緩和的放射線治療を地域へ」のスローガンと共に、地域医療機関との連携を密にしていきたいと考えています。令和4年に取り組み始めた「放射線治療ホットライン」「日帰り単回緩和的放射線治療」(詳細は放射線治療科にご確認ください)も積極的にご利用いただけますと幸いです。まだまだ課題も多く、試行錯誤しながらにはなりますが、地域の医療機関の皆様と発展していきたいと考えていますので、今後ともよろしくお願いいたします。

地域の患者さんへ

放射線治療は、がん治療の3本柱(手術、放射線治療、抗がん剤治療)の一つとして、根治的治療(がんを治す)から緩和的治療(不快な症状を和らげる)まで幅広くその役割を担っています。当院での治療技術としては、従来法の照射(3D-CRT)はもちろん、高精度治療(IMRT、VMAT、定位照射など)も積極的に行い、年間約500例程度(約35%は高精度治療)と大阪府下でも有数の治療実績を誇っています。適応は担当医と相談ください。

研究発表

令和元年度

開催日 学会等 演題 演者
7月11日 日本放射線腫瘍学会、他2学会 放射線治療における第三者機関による出力線量評価に関するガイドライン2019. (ガイドライン作成小委員会委員・執筆者として参画) 池田 恢

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