メッセージ・総論
食生活の欧米化、検診の普及、内視鏡技術の進歩に伴い大腸ポリープや大腸がんが発見される機会が増加しています。
アメリカでは、解剖で大腸腺腫(ポリープ)が発見される率が50歳代で30%、70歳代で50%という報告もあります。
いずれ日本もそれに近い数字になっていくものと思われます。
平成20年の日本の統計では、悪性新生物のなかで大腸がんで亡くなる方は、女性では第1位、男性では肺がん、胃がんについで第3位になっています。
「ポリープ」というのは突起物を意味する言葉で病名ではありません。
ですから、大腸ポリープとは大腸の粘膜が突出、隆起したものの総称で、腫瘍(できもの)性の早期がん、腺腫と腫瘍以外の炎症性ポリープ、過形成ポリープなどがあります。
大腸ポリープの多くが腺腫であり、腺腫は前がん病変と考えられており、放置すると腺腫の一部はがん化することが知られています。
全ての腺種ががん化するわけではありませんが、日本の研究で、大腸腺腫を持っていて切除する場合と切除しない場合では、切除しない場合のほうが大腸がんの発生率が高くなったという報告があり、アメリカの研究でもポリープ切除は大腸がんの発生リスクを低下すると報告されています。
一方、ポリープ(腺腫)を経ずに「がん」になる(デノボ発がんといいます)ケースも知られておりますし、ポリープも1回切除しても数年後にはまた発生しているケースは多々経験され、我が国での大腸がんの患者数は年々増加し、50年間で10倍になっています。
大腸がんの進行期(ステージ)は0期~Ⅳ期に分類され、全ステージの5年生存率は70%を超えています。
現在のところ、大腸がんを根治するには切除するしかありませんが、他臓器に転移しているステージⅣでも最近の化学療法の進歩で明らかに生存期間が延長しています。
当院では、消化器内科(消化器内視鏡学会専門医・指導医)が内視鏡的診断、内視鏡的ポリープ切除(EMR)、さらに先進的な切開・剥離術(ESD)を行い、手術は外科の下部消化管グループ(大腸肛門病学会専門医・指導医)が担当しています。
放射線科、内科、外科の大腸カンファレンスで治療方針を話し合い、大腸がん治療ガイドラインに沿って過不足のない進行度に見合った治療を心がけています。
転移症例においても、肝臓外科、呼吸器外科、放射線治療科と連携し、臨床試験を含む最新の化学療法を交えて治療しています。
診断方法
- 大腸がん検診
1次検診:便潜血反応
2次検診:注腸造影検査、大腸内視鏡検査 - 大腸がんの内視鏡診断
大腸内視鏡検査:色素内視鏡、拡大内視鏡、NBI(狭帯域フィルター内視鏡)
大腸内視鏡による生検 - 大腸がんの進行度(転移)診断
CT(頭部、胸部、腹部、骨盤)、MRI(頭部、腹部、骨盤)、腹部超音波、超音波内視鏡、骨シンチ、PET、腫瘍マーカー
治療方法
大腸癌治療ガイドライン2005 年版,2009 年版は以下のウェブサイトで公開されている。
参考サイト
JSCCR 大腸癌研究会「大腸癌治療ガイドライン医師用2010年版」
1)内視鏡的治療
リンパ節転移と伴わない大腸がん(ステージ0とステージⅠの一部)は内視鏡的切除の適応があります。
当院では消化器内科がポリぺクトミー、内視鏡的粘膜切除(EMR)、内視鏡的切開剥離法(ESD)に対応しています。
ガイドラインでは腫瘍の大きさが2cm以下が適応となっていますが、ESDにより2cm以上の腫瘍でも切除できる場合があります。
2)手術治療
内視鏡的に切除できない早期癌及びリンパ節転移の可能性がある大腸がん(ステージⅠ~Ⅲ)は手術治療の適応です。
手術ではがん病巣だけではなく、転移の可能性があるがん周囲のリンパ節も一緒に切除(リンパ節郭清)します。
ステージⅠで90%以上、ステージⅡで約80%、ステージⅢで約70%の5年生存(他病死を含む)が期待できます。
3)進行・再発がん
転移した大腸がんに対する決まった治療法はありません。
個々の症例で、治癒する可能性、延命の可能性、生活の質(QOL)を向上する可能性を考えて、患者・家族の希望にも配慮して治療方針を決めていきます。
肝転移、肺転移、副腎転移、卵巣転移、脳転移などは手術で治癒や延命できる可能性がありますので、各科の専門医の協力でできる限り切除しています。
4)術後フォローアップ
ガイドラインに沿って術後5年間は、近くのかかりつけ医とも連携して再発のチェックを行います(がん連携パス)。
5年以上経過して再発する例は極めて稀でありますので、5年経過した方は2次がん(新しいがん)の発生に備えて、一般のがん検診、人間ドックを受診していただきます。
5)化学療法
切除できずに残ったがんや切除したが再発の可能性が高いと考えられる場合には、化学療法が施行されます。
2010年大腸癌治療ガイドラインとアメリカのガイドライン等も参考にしながら個々の症例に適応した化学療法を行います。
がん専門病院が多数参加する臨床試験にも登録し、より効果があると期待できる治療法の開発にも協力しています。
治療実績
- 大腸内視鏡検査数(消化器内科)
- 大腸内視鏡的ポリープ切除数(消化器内科)
- 大腸がん手術件数(外科)
- 大腸がん化学療法施行件数(外来化学療法室)






