塩化ストロンチウムSr-89(メタストロン注)治療
治療
塩化ストロンチウムSr-89(メタストロン注)治療とは、多発骨転移の患者さんに適用して体内から放射線治療を実施し、骨転移の疼痛を軽減することを目的とした治療法です。その原理は下に述べます。放射性医薬品のひとつであり、治療(注射)は核医学の管理区域で行いますが、治療は外来通院で可能で、1日で終了します。放射線の汚染等に関するいくつかの決まりを守って頂くだけで、辛い治療ではありません。またフレアと呼ばれる、治療後に一時的に痛みが増強する現象が生じることが、約半数の患者さんにみられます。この場合にも対処の方法はありますのでご安心下さい。正常骨髄への影響はほとんど見られず、抗がん剤や放射線外照射と同時に併用することも、現実にはほとんど問題なく実施できると考えています。
実施施設は少なく、堺市内では当施設のみで実施されています。南大阪でもほかには近畿大学病院が実施している程度です。
原理
ストロンチウムという元素はカルシウムと同じ動きで骨に取り込まれます。ストロンチウム-89(Sr-89)(メタストロン注)は、β線を放出し、その体内飛程は平均2.4mm、半減期は50日です。即ちこの薬剤は骨の、殊に転移病巣など代謝の盛んな部位に多く取り込まれ、その部位で平均2.4mmという極めて短い距離に対して放射線治療を行うことができます。骨シンチグラフィー(骨シンチ)と原理的には同じですので、骨シンチで所見のあった転移部位に照射されることになります。
正常骨髄への影響はほとんど見られず、抗がん剤や放射線外照射と同時に併用することも、現実にはほとんど問題なく実施できると考えています。また3か月を経過すれば、再度の治療も可能です。ビスフォスフォネート剤(ゾメタなど)との同時併用も可能です。
体内に放射線の出る物質を注射することになりますが、その飛程は僅か平均2.4mmですので、「体の外まで放射線が出るから孫を抱けない」などということは全くありません。また、余った薬剤はほとんどが尿から排泄されます。尿の扱い、下着の扱いなどには一定期間簡単な注意を払って頂く必要があります。
実績
当院での実績を記します。当院では2008年10月に導入以来、2011年2月末までで25名31回の治療を行っています。そのうち2010年9月までの17名22回の中で、観察不十分例を除く13名の初回治療について効果と副作用を検討ました。肺癌5名、乳癌4名、甲状腺癌2名、肝癌・前立腺癌各1名でした。この期間の後半からは抗がん化学療法の併用も許容しています。
結果は、鎮痛効果は比較的ゆっくりと現れ、平均3週後でした。1か月後を基準に鎮痛効果を判定しましたが、現実には既に鎮痛剤を使用しておられる方がほとんどであり、痛みは軽減されていても、まさかの疼痛増強の場合の予防のために鎮痛剤を服用しておく、という患者さんが幾人かおられ、評価が困難となります。鎮痛剤が減量された、という患者さんは5名、鎮痛剤は減量せず評価が困難な方6名、効果がないと考えられる方2名でした。また甲状腺癌の患者さんでは効果はありましたが、その発現が非常に遅いようです。長期的には少なくとも7名で鎮痛効果がみられた。フレアは9名に認められましたが、いずれも生活への支障はありませんでした。
化学療法を併用しなかった患者さんで白血球・好中球数は一時的に軽度減少し、その後再び増加しました(底は治療5-8週後)。血小板、ヘモグロビンの有意な減少はありませんでした。即ちCTCAE Ver.3でのGrade 2以上の著しい骨髄抑制は認めませんでした。
学会発表・文献
項目 塩化ストロンチウムSr-89(メタストロン注)治療
| 当院における塩化ストロンチウム(Sr-89)治療の初期経験 第16回日本緩和医療学会(2011年7月 札幌) |
池田恢 他 |
|---|---|
| 市立堺病院での塩化ストロンチウム(Sr-89)による骨転移疼痛緩和治療 第49回日本癌治療学会大会(2011年10月 名古屋) |
池田恢 |
| 市立堺病院での塩化ストロンチウム(Sr-89) (メタストロン注)の治療経験 |
(池田 恢、他。癌と化学療法 2012;39:63~68.) |
|---|---|
| 有痛性多発骨転移に対する 塩化ストロンチウムSr-89治療 |
(池田恢、他 臨床麻酔2012;36(増):409-421) |
治療を受けたい方へ
まず地域医療室へご連絡下さい。診察予約を致します。塩化ストロンチウムSr-89実施のための診察は通常は水曜午前または午後に行っていますが、患者さんのご都合にも応じます。受診には医師の診療情報提供書(紹介状)(がんの診断と治療の内容、殊に抗がん化学療法や放射線外照射の既往などや、骨シンチグラムや病巣部の単純X線撮影像、血液検査所見などを含んだもの)が必要です。
実施日は通常、水曜午後です。治療(注射)自体は短時間で終了しますが、その後第1回の排尿を待ち、院内で排尿してからご帰宅頂くことにしていますので、当日は午後半日を予定して頂くと無難です。
疼痛の部位や程度、即ち骨折の危険性があるか、脊髄・神経への影響があるかどうかを実施の前に判定し、外照射との適応を判断させて頂きます。





